アユに関するニュース

●「ウルカ」T( 中日新聞12月22日 鮎のいる風景より)

「ウルカ」はご存じ、アユのはらわたの塩づけである。日本酒との相性は抜群である。ただ最近おいしいウルカを 作るのが難しくなっつたときている。それは、きれいな苔を食べたアユがなかなか手に入らないためであり、 もっつとを言えば、きれいな川が少なくなっつたということである。
こいっつた食文化が廃れていくのは寂しいことだが、アユや川を取り巻く環境は厳しく、あきざめざるを得ないと いう気がしている。自然環境や生き物を犠牲にしながら人だけが豊かに生きるという今の私たちの暮らし方は、 失うものが多い。しかし、そんな中にも一筋の光明が見えている。アユやきれいな川を取り戻そうという取り組みが 各地で始まっているのである。
百万匹を超える天然アユが遡上し話題になった東京都の多摩川では、これを契機に清流を取り戻す運動が始まった。 大阪府と奈良県を流れ「全国一汚い川」とまでいわれていた大和川でも、百万匹の天然アユを上らせるという プロジェクトが発足した。川辺川ダム問題に揺れている熊本県の球磨川では、天然アユを守るために女性たちが、 「尺鮎トラスト運動」を行っている。全国の漁協の中にも天然アユを増やすことに力を入れるところが増えてきた。
こういった取り組みが実結び、日本の川にたくさんの天然アユが遡上するようになれば、それは私たちが 自然とうまく付き合えるようになったことを意味するのではないだろうか。
そして、そういった努力に対するご褒美として、おいしいアユやウルカが普通に食べられるようになればうれしいし、 そんな暮らし方は次の世代への贈り物になると思うのである。

●「ウルカ」U( 中日新聞10月5日 伝統食いかがより)

「こがん苦かもん!思うでしょ。ばってんこの苦かもんがよか」熊本県川辺川の漁師が胸を張る。昨年の落ちアユで 仕込んだ一年ものを、味見させてもらった。おはしの先をなめてから、うっとりする苦味のいきつく先を 追うのにしばらくかかる。
鮎のわたの塩辛を、苦うるかという。白子や真子(卵)も塩にして子うるかにする。苦うるかは数カ月、一年と、 おくほどに味わいが深まる発酵食。焼酎あてに絶品。熱々御飯の甘みともよく合う。アユ漁師たちが、宝物のようにして ちびちび楽しむ自慢の味である。
食べるばかりでなく、昔から腹痛、虫さされ、打ち身などの家庭役として使われてきた。
古里の山川草木の恵みを、どう使えば薬になるか。昔の人は豊かな知恵を持って暮らしてきた。戦後世代の多くは、 私を含めて伝承のバトンを受け取り損ねてしまった。もったいないと思う。
失いたくないものは、数えきれないほどある。なかでもウルカは絶滅危惧伝統食の一つだろう。 原料になる天然遡上のアユが、激減しているからである。
うるかにするのは、9月以降の落ちアユ。滑らかな銀の肌。胸びれの上の鮮やかな黄色の斑点。婚姻色の薄紅が透き通る。 美形にして腹の中まで美味。
アユは香魚とも呼ばれ、新鮮なうちは魚のくせにウリのにおいがする。すいかだっりキュウリだったり、 川によって異なるのは、岩に着く藻が違うからだという。清流に着く藻しか食わないから、わたも香ばしい。
アユは川である。 清流川辺川はゆったりと深く、音高く白く波立っている。背の急流が、 水中に酸素をおくって藻を育て、アユのえさ場と産卵場所になる。ふちは大水の時の魚達の隠れ家だ。
「アユが動くときは、ほかの魚は動かん。網にもかからん。アユが追い払うとです。この川ではアユが一番つよか」
真っ先に上等の藻をはむアユも、明け方にとれるものはほっりしているそうだ。
ウルカは腹ぺこアユのわたで作る。そっと握って腹を割き、毛糸くずほどのわたをつまみ出し、中の不純物を取り除いて 塩をまぶす。わたの鮮度を保つため、氷り水で手を冷やしながらの作業だ。落ちアユのシーズン中、 少しづつ足して毎日かきまぜ、二ヵ月後から食べられる。一年もおくと、完熟のまろやかな味わいに。
「子供のころは瀬に座り込んで、手でアユをつかみよった。のどが渇けば川の水を飲んだとです」 老漁師の話も昔話になりつつある。清流を失えば潤香も消えてしまう。

●「釣りたて」味一番( 中日新聞6月30日 鮎のいる風景より)

川自慢に「うちのアユが一番うまい」というのがある。このことについて考えると三つ理由があるように思う @地元びいきA食べ慣れている味がその人の好みになってしまうB地元の川だと鮮度が良い
@とAは単なるる想像にすぎないが、味覚というのは、独善的な判断が入ることは少なからずありそうな気がする。 三つめの「鮮度の違い」というのは、もう少しまともな理由がある。
アユは、しめてからの時間で、かなり味が変わる。アユ独特の香りや甘みは時間の経過とともに失われ、 一晩おくとその差ははっきりとする。アユが一番おいしいのは「釣りたて」なのである。
となると家から近い川で釣ったアユほど鮮度がよくおいしいということになりはしないか。
北大路魯山人が八十年ほど前に「鮎の食べ方」というエッセイを書いている。 その中で「鮎をおいしく食うには産地に行く以外に手はない」と述べている。魯山人が言うとやはり説得力があり、 三番目の理由は正しいような気がする。
ところで、「うちの鮎が一番うまい」という話におまけがあって、「アユが食べる苔が違う」という話になる。 つまりアユの味というものは、アユの体だけではなくてアユが食べた餌までが 混然一体となって醸し出される奥深いものなのである。
と思っていてら、ある人にあっさりと否定されてしまった。腹の中のコケなどはアユを食べるうえでの 雑味にすぎなくて、アユをいけすで一晩かってフンを出すとずっとおいしくなるという。 試しに自宅でやってみて驚いた確かにうまい。

●ダムとアユのこと( 中日新聞9月29日 鮎のいる風景より)

かってアユは「川のむし」ともいわれるほど多かった。日本の川が持っている「アユをはむく力」は それほど大きいのである。しかしダムができると、川が分断されたり水を取られたりで、アユをはむくむ力はいやおうなく おちてしまう。これはダムを造る以上づしようもない。
ところが現代のアユの減り方というのは、ダムによる生殖場所の減少や水量の減少などで説明できる程度でなく、 はるかに少なくなっている。その理由二つあるように思われる。

一つは、ダムの建設により二次的な環境の悪化が起きたこと。ダムを造って四十年、五十年もたつと、川底が固くなり アユが産卵できなくなるといった問題が出やすくなる。

もう一つは、ダム以外の原因である。ある川でアユが上流に上がらなくなった。地元では、ダムから出る「悪水」 をアユが嫌うことが原因とされていた。しかし、それは思い違いで、もともとの構造に問題があった魚道が壊れてしまい、 上がれなくなっていた。本当に残念なことのであるが、ダムのある川で地元の方々のお話を聞いていると、 こういったダム以外の要因もすべてダムのせいだといわれることがある。

ダムのために失ったものの大きさはを思うと、ダムのせいにしたい気持ちはわかるがダムおせいでもないものも ダムのせいにしていると、取り戻せるものも取り戻せなくなってしまう。
遅ればせながらも、国や電力会社はダムの環境対策にかなりの力を入れ始めた。アユのためにダムの水を使うことで 実際にアユが増え始めている川もある。

  ● アユの漁獲量( 中日新聞9月1日 鮎のいる風景より)

アユの漁獲量は1991年をピークに減り続けている。そん中、ダムがたくさんあり、河川環境は決して良くない 天竜川(静岡県)や矢作川(愛知県)で、天然アユが増え始めたことをこの連載で紹介した。漁協や住民の協力の 成果である。
しかし天然アユを増やすための具体的な方法については、まだまだ整備は進んでいない。川ごとに手探りで進めているのが 実情で、情報発信さえ十分にできていない。
もし、失敗例や成功例、倫理に裏付けられた技術、そういった様々な情報をみんなで持ち寄れば、天然アユを増やすという 夢も現実味とスピード感が増やしてくれるのではないだろうか?どうすれば天然アユは増えるのかーという全国の 河川に共通する課題を話し合うために、ネットワークは「天然アユを増やすと決めた漁協のシンポジュウム」を 開催してきました。
☆ 第1回は(2006年、浜松市)のテーマーは「内水面漁協が目指す方向」放流に偏った
   増殖策から天然アユの 切り替えの必要性と漁協の体質改善の重要性についての
   話し合い。
☆ 第2回(2007年、愛知県豊田市)は、「天然アユの復活と河川利用の調整」がテーマ。
   アユの増殖と対立しやすいダムや水利用とどう折り合いをつけていくのか?
   共存の道はないのか?
☆ 今回は最終回で。11月に和歌山市で開催し、基調テーマは「天然アユは誰のもの?」
   本来は所有者のいない天然アユは誰のものかという根源的な問題を考える、
   併せて、天然アユを増やす活動を通して、川を守り、そして地域の振興に生かすための
   方策を話し合っていきたい。

● 土砂の「ツケ」どう処理( 中日新聞8月18日 鮎のいる風景より)

天竜川ではアユの減少の一途をたどっていた。危機感を持った天竜川漁協(浜松市、秋山雄司組合長)では、四年前から 天然アユを増やす取り組みを始めた。その漁協からの依頼で、調査をお手伝いさせて頂いている。初めて天竜川を 案内していただいた三年前の印象は、「この川に本当にアユが住めるだろうか?」というものだった。佐久間ダムをはじめ 上流にたくさん建設されたダムの影響で、川はいつも濁っている。大雨の後は、茶色の濁りが一か月も続くことがある。
ただ、幸のことに、静岡県水産試験場が長年にわたってアユの調査を行っていた。その資料を見ると、アユが減少した原因は 明白であった。ふ化する数が年々減っていたのである。
当面はアユの子を増やすこと。漁協では産卵場整備をはじめ、産卵の保護期間と保護区域を拡大して保護に努めた。 その効果は、漁協が行ったデータにも表れた。不安定であったアユのふ化量が三年続きで増え、それに呼応するように 遡上の量も増えている。

● 今年のアユは不漁か?( 中日新聞鮎のいる風景より)

中日新聞の「生活」の記事の中に「高橋勇夫・たかはし河川生物調査事務所代表」方の記事がありましたので ご紹介いたします。
例年、高知の川では2月中旬になれば、アユの姿が見かけるのであるが、今年は3月に入っても「遡上した」 という情報が少なかった。
アユが「たくさんいた!」という話はあまり当てにならないが、「見えない」というのは、 尾ひれがつかないので信用できる。
で、今年は、全くいってよいほどいい話がない。東海から九州にかけての広い範囲んで「見えない」と いう話ばかりが聞こえてくる。(3月15日現在)ひょっとすると西日本はまれにみる不良になるかも しれない。
産卵期である秋に雨が少なと、翌年は不漁になるということは、多くの川で言われている私の住んでいる高知 では高い確率で起きる現象である。昨年秋は西日本では雨が少なく渇水状態が続いた。アユには厳しい条件の 秋だったのである。

● 温暖化で東へ北へ移る( 中日新聞鮎のいる風景より)

全国のアユの漁獲量は1991年をピークにして最近は減り続けている。 そんな傾向の中で、面白い事がおきている事が気づいた。現象のスピードはどうやら地域によって違って いるようなのだ。
全国のアユの漁獲データーを西日本と東日本に分けてみた。関西から西が西日本その他は東日本である。 絶対量は、どちらも減少しているのだが、東日本ではその傾向が緩い。 ためしに各年の全国の漁獲量を100%とし、西日本と東日本のパーセントテージを計算してみた。 つまりシェア争いを見てみたのである。そうすると、80年ころは60%近くを占めていた西日本は、 図のように徐々にシェアを落としており、近年では完全に逆転してしまったのである。
この原因を特定するのは難しい。川の状況(水質の悪化やダムの建設)は西日本だけで悪くなったとは 考えにくいし、放流事業が西日本ではうまく言っていないという事実もないようだ。 アユの大量死を起こす冷水病の被害は東北では小さいようであるが、こういったことだけで、 シェアが逆転するほどの差が出るであろうか?そもそも、西日本の凋落傾向は冷が発生する以前から 始まっているのだ。
細かく見ると西日本の中の高知県のようにこの30年間で10分の1まだ漁獲量を減らしている所が有る。 それに対して東日本の中の茨城県のように緩やかに増えている所があるのである。相対的に暖かい 西日本ではアユが減り、寒い東日本では減っていない。 ひょっとしたら、この現象は近年の温暖化と関係が有るのかもしれない。アユの先祖は北の方に住む キュウリウオの仲間だと考えられている。そうすると、アユの産地が温暖化の影響で北にシフトすると 言うのは納得できる現象と言えないだろうか。

● アユの病気( 中日新聞鮎のいる風景より)

農林水産省は3月16日、東京や広島、山口の川で昨年、大量死するなどして見つかったアユから、 国内で初確認となる魚の病原菌「エドワジェラ・イクタルリ」を検出したと発表。発生状況の調査や放流用の 稚アユの検査などを求める注意喚起文章を、全国都道府県に出した。
東南アジアの養殖ナマズなど広まっている「エドワジエラ症」の原因菌。国内では養殖のヒラメやウナギなどで 似た感染症が起きているが、これは別の菌確認。観賞魚やニジマスにも感染するが、同省は 「人健康への影響はない」としている。
どうしょうは、東南アジアから輸入された魚を通じて広まった可能性があると見ている。
昨年8月に東京都の玉川でアユの死骸が見つかり、9月から10月にかけて山口県の錦川で約1400匹が 大量死。広島県でも同時期に死骸が見つかった。体表やうろこの付け根が赤く変色したり、腹部がはれていた。 広島大と水産総合研究センターが菌を検出し遺伝子解析。東南アジアの養殖ナマズなどと同じタイプと特定した。
山口県は昨年の猛暑で水温が上がっての菌の活動が高まったのが大量死の一因と見ており、 「水温が低いうちに対策を採れば再発を防げそうだ」としている。